自由をデニスに
数ヶ月前、香港のビューティ業界がちょっとした騒ぎになった。そのときの感想。
仏大手メーカーが、香港の現地歌手を招いたPRパーティをキャンセルした。そしたらその歌手がSNSで異議を申し立て、それに乗じた香港現地の政治活動家達が民衆を煽ってそのメーカーの不買運動を起こしている模様。わお。日本やアメリカでは考えられない。
なんでも、その現地歌手は過去(2014年のプロテスト)政治運動の先頭に立って逮捕されていた。それを知った中国本土が彼女の起用に異議を申し立て、メーカーは今回「安全性の理由により」イベント中止を決定したらしい。
イベント主催側の、最初のチェック(そもそもなんで彼女を起用しようとしたのか?)がゆるかったのか甘かったのか知らないが、今回の中止は、企業としてはリーズナブルな決定と言えるし、それに異議を唱える歌手は、この機会を自身の主義主張をもう一度世間に訴えるネタとして有効活用したにすぎない。その点、彼女はそのチャンスを活かしたように見えなくもないが、BBCのインタビューを見る限り、彼女の主張はちょっと飛躍気味で「フランス革命を起こしたような、発展的で民主的な国の大企業が、中国本土に丸め込まれた」みたいな話になっていた。そう語る彼女は、正直、ぜんぜん美しくなく、賢くも見えず、短絡的に誰かに言われてノリで言ってる印象さえ残した。(的確なアドバイスをしてくれるマネージャやエージェントはいなかったのか?)
歌手やアーティスト、モデルは、自分自身が商品でもある。
容姿はもちろんのこと、主義主張、行動が全て商品価値として反映されるのは当たり前。
プライベートをある程度尊重されるようになるまで(=メディアへ逆影響できる位大物になるまで)、ある程度みんなその職業を選んだら甘んじてプライベートも切り売りしているのが事実。
すくなくとも資本主義の世の中ではそう。
(ちなみに香港は資本主義です。中国本土は社会主義。)
そのような価値観の職業を選んだのは自分だし、過去政治活動で逮捕されたのも自己責任。
その過去が原因で、たまたま1回呼ばれたイベントが中止になったとしたら、それが自分が起こした行動の結果として受け止めるべきじゃ?自分の商品価値を自分で下げておき、キャンセルに逆切れして自分自身の政治的思想への反応ととらえられてもねぇ。
たとえ、中国本土が、彼女は公的なイベントにはふさわしくないから、起用するなら本土で不買運動を起こすと言ったとしても、だ。
なぜなら、彼女のもともとの主義主張は、香港にフリーダムを求めること。でもフリーダムって自分の都合の良い時だけ使える訳じゃなく、自己責任とか義務とセットで機能するもの。
企業は、当然だが、利益を追求する団体であり、株主への配当を上げることが目的で存在する。資本主義の権化である。なので、売上を考えたらどちらかの市場に味方しないといけない場合もある(本土よりは香港でのスキャンダル・不買を選ぶ、みたいな)かもしれない。 そして、何よりも、企業イベントというのは、パブリックなものなので、まず第1に参加者の安全を少しでも揺るがすことはできないと思う。ひとりのイベントゲストのために安全性を無視してイベントを執行することは企業が選ぶ選択としてありえないだろう。
例えば、ある歌手にスキャンダルが起きて、それが誰かの反感を強く煽るものだとしたら、その彼女を招いたイベントは、タレント変更されるか中止になる。世界どこだってそうなると思う。そのスキャンダルが政治的なものであったらなおさら。。。
日本だと、不倫でも自粛を強要されちゃうくらい風評に敏感だから、今回のようなある意味ダイナミックな展開にはびっくりする。そもそも若い女性歌手が政治に踏み込みデモの先頭にたってを逮捕されることか、なかなか、ありえない。
その歌手が知るべきなのは、彼女が自分自身の「商品価値」に影響を与える行為をするのも彼女の自由。また、そんな彼女を起用するかどうかを決めるのも、キャンセルするのも(キャンセル料が派生するなら払ってあるという前提だけど)資本主義の元では、企業の自由である、ということ。
この件、アメリカのメディアでは「企業が中国に対して敏感になっている」という見方でレポートしていることが多いけど、センサーシップにより映画の内容を変更したとか、出版が出来なくなったとかという言論や表現の自由制限と比べる話ではないと思うよニューヨークタイムズ、
消費者の安全と、売上を鑑みた企業判断は、資本主義の香港市場においては当たり前の判断だと、私は思う。まあそれに異を唱えるのも、不買しようと訴えるのも自由っちゃ自由だけど。。。
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